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2013年12月23日 (月)

『永遠の0』みてきた

『永遠の0』みてきた。

司法試験浪人中で実質ニート(苦笑)の主人公・健太郎の亡くなった祖母の愛した、実の祖父・宮部久蔵の物語である。

毎度おなじみミリオタ的ツッコミだけど、今回はCGによって見事に再現されたボーキサイトの女王IJN赤城の、斜め煙突から排煙と冷却水を撒き散らしながら突進する雄姿が素晴らしいです。そして、あの飛行甲板の真っ先にある矢印が、発煙筒蒸気を組み合わせて風読みに使用されていたコトが知れただけでお腹いっぱいです。
そして迫力ある空戦シーンに、音声無線機無き機上で交わすブロックサインに、機を降りた際の僚機の部下や整備士や学徒出陣の予備士官たちに見せる優しさに、作中に描かれる宮部の強さの秘訣がわかれば……一般人には難しいよ(苦笑)。彼の空戦スタイル=高空からの一撃離脱戦法に比し、日本陸海軍パイロットが好んだ巴戦=格闘戦が、戦闘機に絶対必要とされた速度と高度を失わせてしまい、結果多くの犠牲を出してしまった原因であったコトを、ラバウルでの航空消耗戦や時代遅れとなりつつあった3機編隊編成の不利と併せてきちんと説明されるべきだったかと。
あ、久々に薬莢飛び散るガンファイターの雄姿を見たわ。

一方で、航空機のボーテクス/ベイパー・ロールや排気/排熱効果、そして何よりもウォーター・スプラッシュの処理がなされなかったために、発射された魚雷も被弾した零戦も着水シーンに違和感を感じてしまったのが残念。

あと、「富高飛行場」とは、宮崎県日向市にあった海軍飛行場のコト。また、土浦や宇佐よりも何よりも実際の最前線となった鹿屋(展示施設的には知覧の方があまりに有名だけど、あちらは陸軍航空隊)のコトは知ってから見られるべきでしょう。
でもでも、鹿屋にあんな立派な整備工場ってあったのかなぁ~。筑波の方は使わせてもらったんだけど、鹿屋にも残る航空隊庁舎は現役なんで使わせてもらえなかったみたいだし。それと、出撃も分散された掩蔽壕からだったかと思うんだけど……。

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それでは例によって、以下はネタバレ発言です。ネタばれがキラいだとか、ネタばれがダメだとか、ネタばれが許せないなんて方は、ご遠慮願います。

ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~

天寿を全うし亡くなった祖母・松乃の葬儀の日。孫・健太郎は始めて実の祖父・久蔵の存在を知る。特攻出撃し戦死した彼の存在を知った健太郎は姉・慶子とともに、祖父の戦友たちを訪ね歩くが、聞こえてくるのは卑怯者・臆病者との謗りばかり。が、一人の部下が真相を話し始めるのだが……。

残念だったのは、原作小説自体戦後60年もたっての出版であったコトによって、当事者たちの肉声を上手く伝えられたのか疑問であるコト。だがしかし、作中にもあるように「特攻=自爆テロ」との誤った認識を正すコトから始められたのならば、そのような不条理に抗するコトを許されなかった飛行士たちよりも、組織的命令を下してしまった愚かな指導者たちにこそ光を当てなければならなかったとも思ってしまう。国軍決戦と称されたフィリピン戦役において、通常攻撃を行った他の飛行隊に戦果が無く、そして不幸にして神風攻撃隊だけが戦果を上げてしまったコトも含めて。
それだけに、理論づくで体当たり攻撃の無意味さも強調されてほしかった。レーダーと要撃機と対空砲火の厳しい防御を未熟なパイロットが突破できない現実だけでなく、特攻機の体当たりでは対艦爆弾は音速を出ないので装甲甲板を突き破れない現実や、急降下爆撃よりも練度を必要とせず一方で対空火器への有効打を与えられる緘降下・水平爆撃と機銃掃射/ロケット弾攻撃の併用、(実際は準備をしていましたが)特攻拒否で有名な芙蓉部隊が得意とした薄暮攻撃など、戦技・戦術面への言及もあった良かったのではないかな?

結局、戦前の日本軍全体が抱えていた、戦訓の共有化と戦績の評価、そして何よりも前線で戦う兵士たちにいかに「我慢」を強いていたかこそ、もっと取り上げられるべきだったかと。
ただ、こんなコトはヒューマン・ドラマには不要なコトだし、世間の人はなぜ宮部久蔵がどう生きてどう死んでいったかこそに注目し、小説を読まれ映画を見られるのだから、そんな説明臭いコトよりも、その不条理に対する怒りと生命への愛おしさこそ描かれた点で、正解だったのではないかと思う。

USSタイコンデロガCV-14へと突入する宮部機が遺した思いを、健太郎を通じて今の日本人が正面から受け止められる日は、まだ先なのかもしれない。が、残された時間は残り少ない。それだけに、68年前のあの全てがウヤムヤにされてしまった終戦敗戦から、日本人は未来を託すコトの大切さを忘れてしまったのではないかな?


ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~ネタバレ~

散りばめられていた伏線が収束していくラストに、宮部久蔵が残したかったものが伝われば幸いかな?
そしてそんな最後を纏めていった染谷将太くんの好演が素晴らしい。

・作品性
 ☆☆
・ストーリー性
 ☆☆
・メッセージ性
 ☆☆
・製作陣
 ☆
・俳優陣
 ☆

以上、10点満点で8点。
個人的には、国家の未来を浪費した特攻作戦の不条理を、もっと合理的に責めてほしくもあったです。

それでは~!

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コメント

アレは発煙筒ではなく、機関室から送られた蒸気です。

投稿: もも | 2014年6月 5日 (木) 01時47分

ももさま。
ご指摘、ありがとうございます。早速訂正しておきました。

投稿: か~と | 2014年6月 8日 (日) 15時28分

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